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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
大切なことって、まわりの倫理観によってがらりと変わってしまうこともありますよね。本作を読むと、よりそう思ってしまいます。
ということで、今回は村田沙耶香さんの『生命式』をご紹介させていただきます。
<おすすめ記事>
生命式/村田沙耶香
文学史上、最も危険な短編集。自身がセレクトした、脳そのものを揺さぶる12篇。(「BOOK」データベースより)
クレイジー | 10/10点 |
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ドキドキ | 8/10点 |
感動 | 7/10点 |
切なさ | 8/10点 |
読みやすさ | 8/10点 |
総評 | 9/10点 |
書評・感想文
五臓六腑に染む
僕にはあの大歓声が聞こえます。その声は口々にこう叫んでいます。「クレイジーだ! クレイジー沙耶香だ!!」と…
本作『生命式』は、村田沙耶香さんのクレイジーっぷりが五臓六腑に染み渡る傑作短編集です。やっぱりクレイジー沙耶香さんはこうじゃないと物足りないですね。コンビニの域で止まるお方ではないのです。
生命式とは
まず、そのクレイジーっぷりは表題作『生命式』で、マシンガンのようにいきなりぶっ放されます。このお話の舞台は、お葬式とは別の生命式がメジャーになった世界。いや、待ってくれ、生命式とは何なんですか。その疑問はごもっともですね。
具体的には、ぜひ本作を読んでから知ってほしいのですが、簡単に言えば死者をみんな集まって、調理して食べてしまおう、という式です。うおおお、クレイジーです! クレイジー沙耶香さんです。
圧倒的な世界観と言葉
現代の倫理観から言えば、それはおぞましいことですし、人間としてやったしまったら終わりな行為です。そのはずなのに、読んでいくと…「あれ、むしろ火葬って命をぞんざいに扱う行為なのでは…?」と、次第に猜疑心を植え付けられます。圧倒的な世界観と言葉のビッグウェーブがそうさせてしまうのでしょう。村田沙耶香さんがクレイジーなだけだと思ったら大間違いです。
はたして正常とは何なのか。そんなことを考えさせられる全十二篇。心と脳みそを揺らしたい方にはおすすめの一冊です。クレイジーぶりに酔いしれましょう。
心に残った言葉・名言
「私、前に中尾さんくらいの体型の男の人食べたことあるけど、けっこう美味しかったよ。少し筋張ってるけど、舌触りはまろやかっていうか」
生命式とは、死んだ人間を食べながら、男女が受精相手を探し、相手を見つけたら二人で式から退場してどこかで受精を行うというものだ。
本能なんてこの世にはないんだ。倫理だってない。変容し続けている世界から与えられた、偽りの感覚なんだ。
「まあまあ、世界はさ、鮮やかな蜃気楼なんだよ。一時の幻。いいじゃんか、今しか見ることのできない幻を、思い切り楽しめば」
だって、正常は発狂の一種でしょう? この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います
妹の卒業アルバムを覗くと、『いつか魔界都市につれていってね!』『敵との戦いがんばれ!』と友達からメッセージが書かれていた。
美しい言葉を吐いたあと汚い言葉を吐くと、『本音を言った』って騒ぐ人がほとんどよ。逆をやっても『嘘を吐くな、偽善者』って喚く。
村田沙耶香さんの他作品
最後に
クレイジーな小説を読みたい人、倫理観に疑問を持っている人、正常な発狂をしている人にはおすすめだから、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。