ご覧いただきありがとうございます。
本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
ああ、開けたい。なんか閉じているものを見かけると、つい開けたくなってしまいます。もし窮屈で理不尽な世界が広がっていたとしたら、やっぱり風穴開けたくなっちゃいますよね。
ということで、今回は森絵都さんの『カザアナ』をご紹介させていただきます。
<おすすめ記事>
カザアナ/森絵都
平安の昔、石や虫など自然と通じ合う力を持った風穴たちが、女院八条院様と長閑に暮らしておりました。以来850年余。国の規制が強まり監視ドローン飛び交う空のもと、カザアナの女性に出会ったあの日から、中学生・里宇とその家族のささやかな冒険がはじまったのです。異能の庭師たちとタフに生きる家族が監視社会化の進む閉塞した時代に風穴を空ける!心弾むエンターテインメント。(「BOOK」データベースより)
風穴 | 10/10点 |
---|---|
ドキドキ | 7/10点 |
感動 | 6/10点 |
切なさ | 7/10点 |
読みやすさ | 8/10点 |
総評 | 7/10点 |
書評・感想文
仮想未来
『カラフル』や『ラン』など、今までにも心躍るSF小説を届けてくれた森絵都さんが再びやってくれました。
もういっそのことめちゃくちゃSFにしちゃえ! と意気揚々と書いたのか、どうかはわかりませんが、本作『カザアナ』の舞台は仮想未来。現代とは違うシステムの未来を描いた小説です。
カザアナ
どんな未来かと言いますとネタバレになってしまいますので言いませんが、要するに息苦しい世界です。そんな世界でカザアナという特殊能力者と出会った入谷ファミリーの世界に対する憤懣と奮闘がコミカルに、そして、ユーモラスに描かれていきます。
カザアナというのは、平安時代から引き継がれている特殊能力者です。能力によって使いどころは分かれますが、その不思議な力が理不尽な仮想未来でどんな活躍をするのか。心が騒ぎます。
会心の一撃
歴史的なロマンと息苦しい世界に蔓延る問題。そして、ちょっと笑えて、ちょっと切ない入谷ファミリー。本作『カザアナ』は森絵都さんの挑戦でもあり、読み手の心に風穴を開けるような会心の一撃でした。
僕がもしもスライムだったならば、即死ものでしたね。ああ、人間でよかった。
心に残った言葉・名言
この世に絶対はない、と言ったのはダディだった。
運命なんて信じない、と言ったのはマムだった。
赤や青のぎんぎら模様を背中に光らせた虫が五匹、床の上に横一列のラインを描き、コサックダンスを踊っていた。
「百パーセント確実なのは、何もしなければ、うまくいく確率はゼロパーセントってことだ」
「早久、どうしても黒髪に染めたくないのなら、髪の色だけで目立つんじゃなく、全身で目立てる男になれ。出る杭は打たれるが、出すぎた杭は打たれない」
「いつも楽しそうに笑ってろ。人は悲しそうな人間に同情はしても、そばに置きたいのは楽しそうな人間だ」
「でもさ、その膨大な過去のデータには、まだ早久も次郎も入ってないよね。今、ここにいる早久は、ここにしかいないたった一人の早久なんじゃないの。次郎だって、たった一人の次郎なんじゃないの」
たたかわずしてなにかを守るは、たたかってなにかをたおすよりも、はるかにけわしき道にございました。
「目をそらしちゃいけないヤミと、見なくてもいいヤミがある。見なくてもいいヤミは、目をつぶってごくっとのみこんじまいな」
一世一代の勝負というのは、得てして狂気と紙一重なものです
「私も最近わかったんだけど、この世界は、人間が思ってるほど人間だけのものでもないみたい」
森絵都さんの他作品
最後に
現状に憤懣を抱いている人、風穴を開けたい人、コサックダンスを踊る虫を見たことがある人にはおすすめだから、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。