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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
その川はとても淋しい場所にありました。でも、そこに住む人々からは生きていく力強さを感じます。そして、哀しみと喜びも。
ということで、今回は西條奈加さんの『心淋し川』をご紹介させていただきます。
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心淋し川/西條奈加
不美人な妾ばかりを囲う六兵衛。その一人、先行きに不安を覚えていたりきは、六兵衛が持ち込んだ張形に、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして…(「閨仏」)。飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな女の子の唄を耳にする。それは、かつて手酷く捨てた女が口にしていた珍しい唄だった。もしや己の子ではと声をかけるがー(「はじめましょ」)他、全六編。生きる喜びと哀しみが織りなす、渾身の時代小説。第164回直木賞受賞。(「BOOK」データベースより)
淋しさ | 8/10点 |
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ドキドキ | 7/10点 |
感動 | 8/10点 |
切なさ | 10/10点 |
読みやすさ | 8/10点 |
総評 | 8/10点 |
書評・感想文
極上の時代小説
時代小説というのは哀愁が鍵です。その時代特有の現代では味わえない哀愁。なぜその哀愁は生まれたのか。どうやって醸し出されるのか。
そんな哀愁が存分に漂う物語こそ極上の時代小説だと思うのです。
生きる輝き
本作『心淋し川』には、絶妙な哀愁が詰まっています。まず、舞台が『心町(うらまち)』という人生に行き詰まったような人たちが集う町なのです。この時点で哀愁が漂わないわけがありません。
それでも、心町でつまづきながらも懸命に生きる人々は輝いています。時代というのは無情なもので、人間に辛くあたりがちですが、それでも前へ進もうとする人々の姿はとても気高く、美しいです。
これが人間の生きる力の輝きなのだと実感します。
心満足
また、本作は短編集ではありますが、そうだったんかい! という驚きも隠されていました。それがまた哀愁に火をくべるのです。もくもくと哀愁が勢いを増していきます。哀愁ファイヤーですね。
「どうも、この哀愁こそが時代小説の醍醐味です」という哀愁を存分に堪能させていただいた『心淋し川』でした。これはもう、心淋し川というか心満足川です。
心に残った言葉・名言
「女が本気になるのは、惚れた男のためだけさ。手に入れようと思ったら、我が身を賭けるしかないんだよ」
「子供のためと口にする親ほど、存外、子供のことなぞ考えてないのかもしれないな」
虚に等しく、死に近いもの――その名を寂寥という。
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最後に
生きる喜びと哀しみに触れたい人、周りの住人が全員ワケありの人、家を与えて妾を囲っている人にはおすすめなので、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。