PON!と宴





【ネタバレなし】本当の罪人は一体誰?|山田詠美さん『つみびと』 書評・感想文と心に残った言葉・名言

f:id:s-utage:20220418074922p:plain

ご覧いただきありがとうございます。

本と宴へようこそ。

管理者:宴
ところで、『どんなに買っても軽いだろう、と気軽に買ったチロルチョコ1000個』と『罪』って…重いよね!
 

どうも、宴です。

どんな罪にも理由や事情があります。山田詠美さんが本作で描く鬼母と呼ばれたつみびとには悲劇的な物語がありました。はたしてつみびとは、鬼母一人だけなのでしょうか。

 

ということで、今回は山田詠美さんの『つみびと』をご紹介させていただきます。

 

 

 

 

つみびと/山田詠美

あらすじ

灼熱の夏、彼女はなぜ幼な子二人をマンションに置き去りにしたのか。追い詰められた母親、死に行く子供たち。無力な受難者の心の内は、フィクションでしか描けない。圧巻の筆致で、虐げられる者の心理に分け入り、痛ましいネグレクト事件の深層を探る。本当に罪深いのは、誰ー。迫真の長編小説。(「BOOK」データベースより)

苦しさ 10/10点
ドキドキ /10点
感動 /10点
切なさ 10/10点
読みやすさ /10点
総評 10/10点

 

書評・感想文

f:id:s-utage:20220407222221p:plain

真実の物語

ニュース番組を見ていると、居た堪れない事件の多さに辟易してしまいます。そんな事件の中でも定期的に流れてきて、心が苦しくなってしまうのが親の幼児虐待。無責任な親の行為には、はらわたが煮えくりかえりそうになります。

 

でも、その無責任な親は元々酷い人間だったのでしょうか。本作『つみびと』は自分の子どもを数日間放置し、殺してしまった蓮音という女性の事件を中心に、蓮音、その子ども、そして母親が語る真実の物語です。

 

悲しみと苦しみ

もちろん、一番悪いのは問答無用で蓮音です。殺人、しかも自分の子どもを殺してしまうことは、世の中にある悪いことランキングでも上位に入る残虐な所業です。でも、蓮音をそうさせてしまったのは、一体誰なのでしょうか。それは蓮音だけのせいだったのでしょうか。

 

作中で描かれる蓮音は必死でした。子どもたちに愛情をもっていたことも窺えます。ところが、上手くは生きませんでした。どんなに必死に生きても、それが報われなかったり、理解してくれる人がいなければ、人間は潰れてしまうのです。

 

必死で生きても何にもならない悲しみ。誰にも理解されない苦しみ。そして子どもたちの物語。蓮音が鬼になるまでの道筋には、心が切り裂かれるような辛さと身もだえるような切なさが転がっていました。

 

つみびと

はたして、つみびとは蓮音一人だけだったのでしょうか。蓮音をつみびとへの道に誘った周りの環境に責任はないのでしょうか。小説でしか描くことの出来ない加害者側の語られる真実には、とにかく胸が締め付けられます。

 

重いテーマで息苦しくもなりますが、本作『つみびと』は、読んでよかったと思える名作でした。加害者側の気持ちを知ることは、悲劇を減らすことに繋がるかもしれませんね。

 

 

心に残った言葉・名言

我慢するのが偉いとは全然思わない。どうにもならないことからは逃げるが勝ちだんべな

管理者:宴
我慢は身体によくない! 

 

優しさは、涙のダムを決壊させる温かな凶器。泣き出して立ち直れなくなるでしょう。

管理者:宴
心にダムはあるのかい?
 

 

母親は、子への愛情を万全に整えた女神様なんかじゃない。どんな母だって、ほころびはある。たいていの場合、それを上手く隠しおおせたというだけだ。そして、そう出来ない者を母親失格と呼ぶ。

管理者:宴
母親だって人間ですから… 

 

世の中の人々の間違いは、産むのと育てるのが同じ能力で出来ちゃうと思い込むことなんじゃない?

管理者:宴
許されない間違いだよ! 

 

おれ、サザエさんちみたいなのどかな家に憧れるんだよね。蓮音ちゃん、ドラ猫、追いかけてくれる?

管理者:宴
そんなことより、ドラ猫に入られない防犯対策をしっかりとね! 

 

殺されたら、新しい人間に生まれ変わるしかない。リアルな自分なんて錯覚なんだ。自分で上書きするフェイクだけがすべて。

管理者:宴
すべてはフェイク! 

 

山田詠美さんの他作品

 

 

最後に

管理者:宴
今回は山田詠美さんの『つみびと』を紹介してきました。
 

周りに恵まれなかった人、子育てにまいっている人、世界一真面目な下心をもっている人にはおすすめなので、ぜひ読んでみてください!

 

それでは本日はこのへんで。

ご覧いただきありがとうございました。

管理者:宴
またのお越しをお待ちしております。