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本と宴へようこそ。
どうも、宴です。
犬って吠えますよね。でもね、人間だって吠える時は吠えるのです。本作の主人公も吠えています。犬はどこだ、と。
ということで、今回は米澤穂信さんの『犬はどこだ』をご紹介させていただきます。
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犬はどこだ/米澤穂信
開業にあたり調査事務所“紺屋S&R”が想定した業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。-それなのに舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして…いったいこの事件の全体像とは?犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵、最初の事件。新世代ミステリの旗手が新境地に挑み喝采を浴びた私立探偵小説の傑作。(「BOOK」データベースより)
勢い | 9/10点 |
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ドキドキ | 8/10点 |
感動 | 5/10点 |
切なさ | 7/10点 |
読みやすさ | 8/10点 |
総評 | 7/10点 |
書評・感想文
こんなはずではなかったのに
やろうとしていたことが、いざやってみると、あれ、こんなはずではなかったのに…と思うことありませんか?
ラーメンを食べようと思って、いざ、お店に入ったら炒飯を注文していたり…大掃除をするはずだったのに、気づくと懐かしの写真を見ていて思い出に浸っていたり…バイキンマンを倒そうとしていたはずなのに、なぜかカバオくんに顔をあげてたり…
犬はどこなの?
本作『犬はどこだ』は、タイトルであり主人公の叫びでもあります。犬捜し専門の探偵をやっていくつもりが、なぜか依頼されたのは人探しと古文書の解読。こんなはずではなかったのに…主人公の消沈ぶりと本作のちょっとしたコミカルさが窺えます。
そんな気持ちを抑えてはじまった2つの案件。主人公ともう一人の語り手が別々に調査をするのですが、思わず「後ろー、後ろー」と言いたくなるような、クロスするようでしない「志村ー、後ろー!」状態が発生します。しかも頻繁に発生するのでやきもきして仕方がありません。このもどかしさは本作の特徴でもあります。
また、二人の語り手は本作をコミカルでユーモラスに演出します。一方は犬捜しをするはずだったのに…という憤懣、もう一方は憧れの探偵になれたことで、ノリノリで調査に出向く。米澤穂信さんの他作品に比べ、より強い勢いと明るさを感じました。
人間はこりごり
ですが、米澤穂信さんは米澤穂信さんであり、米澤穂信さんなのです。いやいや、このまま勢いのままでは終わらせないよ。明るいままでは終われないよ。どこからかそんな声が聞こえてきます。
読了後には、こんな声も聞こえてきました。もう人間はこりごりだ、犬はどこだ、と。これは主人公の叫びですね。
ご安心ください。物語は終わりましたので、存分に犬をお捜しくださいませ。お疲れ様でした。
心に残った言葉・名言
探偵はどこから手をつけていいかわからない事件でもどこからかは手をつけるものだし、好きにやるものだ。
昔、犬とは目を合わせてはいけない、と聞いた覚えがあった。犬は目が合うと興奮するのだと。また、こうも聞いていた。もし目を合わせてしまったら、こちらから逸らしてはいけない。犬は勝ったと思って図に乗るから、と。
図書館は、利用者の秘密は絶対に守ることになってるんです。これは警察が来ても同じです。裁判所の令状があれば出しますが、それだってしぶしぶの話です。どこの図書館でも、どの司書でもこれは基本中の基本です。
やれるかどうかじゃなく、どうやるか……。
米澤穂信さんの他作品
最後に
勢いのあるミステリーを読みたい人、犬を探している人、人間に愛想が尽きた人にはおすすめなので、ぜひ読んでみてね。
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。