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どうも、宴です。
青春ミステリと言えば米澤穂信さん。米澤穂信さんと言えば青春ミステリですよね。その原点となった作品があります。青春ど真ん中に投げ込まれた一冊です。
ということで、今回は米澤穂信さんの『氷菓』をご紹介させていただきます。
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氷菓/米澤穂信
いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実ー。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。(「BOOK」データベースより)
青春度 | 10/10点 |
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ドキドキ | 8/10点 |
感動 | 7/10点 |
切なさ | 8/10点 |
読みやすさ | 9/10点 |
総評 | 8/10点 |
書評・感想文
『古典部シリーズ』一作目
とにかく青春小説が読みたい。で、いざネットで調べてみて、良さそうな本を読んだりするのですが、何かちょっと違うな…痒いところに手が届いていないな…と、思うことありませんか? いや、青春と言えば青春なんだけど、こういうのではなかったな…みたいな。
今や青春小説は数多くの作品が発表されており、集めれば虎ノ門ヒルズぐらいになるのでは、もしくは虎ノ門ヒルズが作れるのでは…? 住めるのでは…? と思ってしまうぐらいなわけで、今自分が読みたいであろう青春の気分にぴったりと寄り添ってくれる小説に出会うのは一苦労です。
ところが、ここに全青春小説を包含しているかのような小説があります。それが『古典部シリーズ』一作目、『氷菓』なのであります。
純度100%の青春
古典部というワードだけ聞くと難しいのでは…? 古典に精通していない自分が読むなんておこがましいのでは…? 場合によっては謝ろう、と月イチペースで訪れる卑屈モードに入りかかっていたのですが、その不安は思い切って飛び込んでみると気持ちいいぐらいに解消されていきました。
なぜならば、本作で描かれていたのは古典の素晴らしさでもなく、ウンチクでもなく、心揺さぶられる謎と混じりけのない純度100%の青春だったのです。古典の知識がなくても、興味がなくても、何かしらの恨みをもっていても関係なく読めるライトな作品でございます。
好奇心と出会い
さて、そもそも純度100%の青春とは何か、ですが…それはパンを咥えた転校生にぶつかるために待ち構えることでもなく、異性50人にフラれ続けることでもなく、ナイフとランプをカバンに詰めることでもありませんが、ナイフとランプぐらい必要なものが2つほどあると思うのです。
ずばり、好奇心と出会いです。
どんな題材であろうと、知見の狭い未熟な存在を駆り立てるのは、無謀な好奇心です。それに読み手はワクワクして青春時代を思い返したり、物語に入り込んでいったりするのです。
そして、出会い。出会いは人を強くしますし、良い意味でも悪い意味でも影響を与えてくれます。この2つがあれば、もうそれは青春なのです。
やる気ない系男子の主人公。そして、何でもどん欲に知りたくて仕方がない知りたがり症候群の少女。2人の出会いはやる気のない主人公の好奇心を煽り、古典部のメンバーたちと共に純度100%の青春を巻き起こしていきます。
彼らが挑んだ氷菓の謎は衝撃の結末を迎えますが、それを通して育まれた古典部の絆、そこにちょっとしたほろ苦さを加えた物語は、まさに青春。これを青春と言わずして、何が青春だと言えるのでしょうか。
古典部と酢昆布
僕はもう小汚いおっさんになってしまい、青春という文字が日本一に合わない代表に選ばれそうになっています。ですが、古典部の物語には、改めて青春の素晴らしさ、貴さを教わりました。何だか清々しい気持ちでいっぱいです。
あと、古典部と酢昆布の語感が似ている、ということも教わりました。これは別に知りたくなかったです。
心に残った言葉・名言
中国では悠久の修行を必要とする脱出が、ここではただ死ぬだけでOK。

高校生活といえば薔薇色、薔薇色といえば高校生活、と形容の呼応関係は成立している。西暦ニ〇〇〇年現在では未だ果たされていないが、広辞苑に載る日も遠くはあるまい。

女で高校生なのだから女子高生だが、くちびるの薄さや頼りない線の細さに、俺はむしろ女学生という古風な肩書を与えたいような気になる。

「ジョークは即興に限る、禍根を残せば嘘になる」

米澤穂信さんの他作品
最後に

これぞ青春ミステリを読みたい人、古典部に所属していた人、古典部と酢昆布をよく言い間違える人にはおすすめなので、ぜひ読んでみてね!
それでは本日はこのへんで。
ご覧いただきありがとうございました。
